Devotion還願の解説

 

注意

この記事では、Devotion還願の物語を解説します。

ゲームが未プレイの方は、ぜひそちらを終えてから、以下の説明に進むことをお勧め致します。

 

物語のあらすじ

フォンウとリメイ

脚本家として才能に溢れた、フォンウという男がいた。1970年頃の、台湾での話である。彼は数々の賞を獲り、その栄華の最中に、リメイという人気歌手と結婚した。リメイは結婚を機に舞台から引退すると、二人は子どもを授かった。

仕事の不調

しかし、幸せは長くは続かなかった。フォンウの脚本家としての仕事が不調に陥り、収入が激減したためである。リメイは専業主婦となったため、夫婦と子の三人の家計をフォンウ一人で賄わなければならず、生活が苦しくなった。止むを得ず持ち家を売却し、かつての華やかさとはかけ離れたアパートに移ることを強いられてしまった。

慎ましい住み家で

質素な新居で再起をもくろむも、事態は好転しなかった。

フォンウが書く脚本はどれもこれも評判が悪く、全くと言っていいほどに収入が無くなってしまったのである。妻が外に出て働くことを申し出るが、「世間体が悪い」と言って跳ねのけられてしまった。

二人の軋轢

生活は苦しさを増し、電気代や水道代ですら払うのが苦しくなってしまった。フォンウは頑なに脚本を書くことに執着し、それ以外の仕事を得ようとはしなかったからである。

夫婦の間での言い争いが頻繁に起こるようになった。リメイは夫の独善的な行動に怒りを表し、フォンウは世間体を悪くするであろう妻の行動に憤慨するのであった。

リメイは実家に帰りたいと両親に打ち明けたり、以前の友人に現在の困窮具合について不満を漏らすようになった。

見過ごされた犠牲者

この夫婦には、小学生であるメイシンという娘がいた。可憐で歌の才能もあり、将来の大成を期待されていた。

ある日小学校から、メイシンが呼吸困難で倒れたという連絡が入る。大事には至らなかったものの、メイシンのこの事態はこれだけで終わらず、今後何度となく繰り返されることとなった。

フォンウは医師の診断を仰いだが、原因は分からなかった。

崩壊する家族

メイシンは、テレビ番組の歌合戦に出場中だった。歌を披露して、審査員の評判が良ければ次の週にも出られる仕組みであり、彼女は何週も連続して登場していた。

ところがある日、そのテレビの舞台上でメイシンは絶叫と共に倒れてしまう。

父であるフォンウは、この原因不明の娘の病気の救いを、いかがわしい霊媒師に求めるのだった。

その一方で妻のリメイは、夫と娘に対して支持的に献身してきたが、ついに家を出ていってしまう。

必死な願い

父と娘は霊媒師のもとへ何度も通うが、メイシンの病状は快方へ向かうどころか、さらに悪化していってしまう。治療は度を増していくが、「私のことを信じなさい」という霊媒師の言葉に、父と子は盲目的になってしまう。

次の治療法は、「娘を浴槽に何日も浸し、何があっても扉を開けるな」というものだった。

フォンウとメイシンはかつての幸せな日々が戻ってくることを信じ、これを実行するのだった。

メイシンの死はなぜ起きたか

外面が大事

フォンウは見栄っ張りです。家にお金が無いのに高級魚のアロワナを買ったり、レコードプレーヤーを買ったり、また妻が仕事に復帰しようとすると、夫である自分の稼ぎが少ないのがばれてしまうから拒んだりと、虚勢を張りたがります。

メイシンが医師の診察を受けると、何も異常無しとの結果が出ます。しかし、これに納得できなかったのが、父親のフォンウです。診断書と、エックス線写真を見ても、フォンウはなお納得できません。

医師から精神科をすすめられますが、父はこれに激怒します。娘を精神科に通わせることを嫌がったのは、世間から何を言われるか分からないと考えたためです。フォンウは自分と同様に、娘の評判も落としたくはないのです。

逃げ場を求める娘

ゲーム中では、視点がメイシンに切り替わる場面が何度かあり、彼女が呼吸困難で苦しむ理由が分かりやすく表現されています。一番の原因は両親の喧嘩であり、次点として、周囲からの過度な期待が病気の理由です。

しかし、両親はこの単純な理由に全く気付きません。父は自分の仕事のことで頭が一杯で、母はお金がない家庭をどう切り盛りするかで必死だからです。

誰かが家に遊びに来ると、メイシンはクローゼットに隠れるようになってしまいます。そして家で飼われているアロワナを見て、彼女はこう思うのです。「閉じ込められていて、私と一緒でかわいそう」と。

自称霊能力者

医者を諦めた夫は、心霊治療を行う「先生」に足繁く通うようになります。

しかしゲーム中での録音テープで明らかになりますが、この霊媒師はインチキだったのです。この人物の治療に従ったものの、一向に病気が改善しないことによる、多数の苦情のやり取りが録音されていました。

一つ私から付け加えると、現実世界の日本でも、同じような事件があります。それが1999年の、成田ミイラ化遺体事件です。必死に救いを求める人の心に取り入り、金銭を騙し取る行為は、今も昔も、世界のどこであれ、決して珍しいことではありません。

物語のまとめ

ある一組の夫婦と、娘が幸せに暮らしていた。娘は両親のことが大好きであったが、家庭内での夫婦喧嘩が絶えないようになってしまった。娘はそのストレスから病気を患うが、両親は病気の理由が分からなかった。

父親は娘を必死に救おうと霊媒師の言葉に従う。しかしその治療の最中に、娘を殺してしまったのだった。